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Clear Blue Sky (4)

家のドアを開ける。
「あら、おかえりなさい。
今日は早かったのね、風音。」
「うん。なんかお腹すいちゃった!
ご飯は何?」
「今日は風音の好きなハンバーグよ♪」
「やったぁ!!」

風音は自分の部屋に戻って着替えると
レターセット引き出しから取り出した。
「翔太に返事書かなくっちゃ。
何て書こう・・・」
などと言いながらペンは滑らかに動く。
「翔太へ。
夢、見つかったんだね!
もちろん私は応援するよ♪
トリマーなんて素敵じゃないの。
そういえばね、私体育祭で応援団やることになったの!
まだ何も練習はしてないけど、今からわくわくしてる。
翔太も見に来れればいいけどね。
会いたいなぁ・・・。
そういえば私たち、会ったこと数回しかないもんね。
夏休みとか、会えない?
翔太の仕事姿も見てみたいな。
返事待ってます♪
頑張れ、夢を追いかける青年、翔太よ!
私も頑張るからね。
絶対獣医になってやるから!
だから翔太も絶対トリマーになってね!
風音より。」

(夏休み、空いてる日なかったかな。)
などと考えながら
手紙を丁寧に封筒へと入れる。
それを終えると今度は
風音と翔太が写った写真を取り出した。

風音と翔太が出会ったのは4年前。
風音が家族旅行で一人で散歩をしていたときにたまたま翔太も居合わせたのだ。
「こんにちわ。お名前を伺っても?」
「俺は翔太。」
「翔太さん・・・。なんだか偶然ですね」
「そうだな。そっちは?何て名前?」
「私は風音です。風に音って書きます。」
「いい名前だな。」
「ありがとうございます」
そんな会話をした。
風音はなんだか運命的なものを感じていた。
次の日も、風音は一人で散歩した。
旅行の最終日だったから景色を撮るためにカメラを持って。
するとまた、翔太はいた。
「待ってたんだ。また同じ時間に来るような気がして。」
「え・・・?どうして。」
「何か運命みたいなのを感じた。上手くは説明できないけど」
「本当ですか?私もだったんです。」
「そりゃ偶然だな。明日も会えるか?」
「実は私、ここへは家族旅行で来ているんです。
今日帰ってしまうから、明日は無理です。」
「そうか・・・。残念だな。じゃあ、文通しないか?」
「文通?いいですけど」
「俺の住所、これだ。」
翔太は1枚のメモを渡した。
「準備済みだったんですね」
「もう会えない気がした。それと、敬語やめてくれないかな。
苦手なんだ。」
「あ、すみま・・・ごめんね。
じゃあ帰ったら手紙送るから。」
「待ってる。」
「あ、写真撮らない?ちょうどカメラあるから」
「そうだな。2人が出会った記念に。」

その時撮った写真が、今風音が持っている写真だ。
(私、頑張るからね!)
そう思いながら写真に微笑む。
(ふぅ。もうこんな時間)
大きく息を吸って
「おかあさ~ん!今日は晩御飯作るの手伝うよ!」
と言って、勢いよく部屋を飛び出した。


Clear Blue Sky (3)

リビングへ降りていくと母が夕食の支度を整えている。
風音は手伝ってという母に従って料理を食卓へ並べていく。
食卓を家族全員で囲む。
アンティークテーブルの前に母、父、姉の美恵、そして風音が座る。
「いただきま~す♪」
「めしあがれ」
「風音って本当においしそうに食べるよね」
と美恵が話かけてくる。
「そう?だってお母さんの料理おいしいんだもん。」
「そこまで言われちゃうと私の腕もなるってもんよ!」
「そういえば・・・」
母が思い出したように言う。
「風音は好きな人とかいるの?」
風音は照れくさそうに答える。
「うん、まぁ。誰かは内緒だけどね。
そうだ、お姉ちゃんは?」
美恵は食事の箸を止めて言う。
「あれ、言ってなかったっけ?
今付き合ってる人がいるって。」
「え?そうなの?どんな人、どんな人??」
「なんていうか・・・おっちょこちょいで照れ屋さんなのよね。
でもすごく優しくて気配りをいろいろしてくれる人。」
「面倒くさがりやのお姉ちゃんにはピッタリじゃない!」
「何よ、それ。」
美恵は大学生だから彼氏くらいいてもおかしくはない。
「2人とも、もうそんな年齢か。」
とつぶやく父の表情がさみしそうだ。
「ねぇ、風音の好きな人は?」
興味深そうに美恵が聞いてくる。
「さっき内緒って言ったじゃん!」
「だって気になるんだもん。
あ、もしかして文通やってる翔太くんって子?」
「う~ん。まあね。」
「会ったことあんの?文通友達でしょ。」
「あるよ、何回かだけど。」
「気になるなぁ。」
「ふふ。まぁそのうち教えてあげる。」
風音の家はとても仲の良い家族だ。
両親も近所ではおしどり夫婦として有名だ。

一方春香の家はあまり良いとは言えないかもしれない。
6年前に父を亡くしてから、母が春香を女手ひとつで育ててきた。
前は東京ではなく父親の実家のある地に住んでいたらしいが
詳しい場所は聞いていない。
風音もあまりそのことにはふれないようにしているせいもあり
春香は謎につつまれた少女でもあるのだ。

「何ぼうっとしてんの、風音?」
休み時間に窓をボーっと眺めていた風音の肩を春香がたたく。
「あぁ、ごめん。ちょっと考え事してたんだ。」
「風音が?めずらしいなぁ。恋のこと?」
「あ、わかった?好きな人に会いたくなっちゃって。」
「会えないの?っていうか風音の好きな人って?」
「内緒。住んでる所が離れてるから文通してるの。」
「へぇ・・・。」
風音も興味深そうに
「春香は?好きなひといないの?」
と聞く。
「私もいるよ。でも風音と一緒で会えないの」
「へぇ。じゃあ仲間だ!」
「そうだね♪」
チャイムが鳴る。
「あ、大変!準備してないや。」
「次って国語だよね。あ~眠い!」
「私、論説文苦手・・・」
ドアが開き声が聞こえる。
「授業始めます。席に座って!」


Clear Blue Sky (2)

部活のない日は家に5時頃着く。
風音はふと立ち止まっていつもの空き地を見る。
そこにはいつもと変わらぬ黒猫のクロがいた。
風音を見るなりクロは寄ってきて
まるで「久しぶりね」と言うかのように
ただにゃ~と鳴くのだった。
「ごめんね、クロ。飼ってあげたいんだけどね。」
クロの目はまんまる、くりくりとしている。
その目だけで全てが伝わってくるような気がする。
風音はクロが言いたいことをいつも目で判断する。
「クロ・・・ごめんね。早く飼い主が見つかるといいね。
もしクロが病気になったら、私が獣医になってみてあげるからね!」
「約束よ」と言わんばかりの大きな目で
またにゃ~とクロは鳴く。
「じゃあ、遅いとお母さんに怒られちゃうから。」

家に着くとまずポストの中をのぞいた。
1通の手紙が入っていた。
「翔太だ!」
「全く・・・返事遅いんだから。」
笑顔で家に入る。
「ただいま~♪」
「おかえりなさい。
うれしそうね。」
「あ、分かる?翔太から手紙が届いたの」
「翔太くん?あぁ、文通友達の。」
「そうそう。じゃ、読んでくるね~♪」

手紙を開いてみる。
「風音へ。元気か?
俺は今、親の仕事を手伝ってる。
親がペットを預かる仕事をしてるのは前にも言っただろ?
実は俺、夢ができたんだ。
 トリマーになるよ。
 風音の手紙読んでて、俺にも何かできることがないかって。
 よく考えたら俺も動物好きだし。
 獣医はさすがに俺の頭じゃ無理だってわかってる。
 でもトリマーならなれるかもって。
 応援してくれるか?
 もしそうならうれしいよ。
 返事遅れてごめんな。
 返事楽しみにしてるから。」

(へぇ。翔太がトリマーかぁ。
意外かもvv返事何て書こうかな。)
1階から声が聞こえる。
「風音~!晩御飯できたよ!」


Clear Blue Sky

目覚まし時計の鳴り響く部屋の中で風音は起きる。
(また月曜日になっちゃったな)と嘆きつつベッドから起き上がり、
朝食を作ってくれている母の元へ行く。
「おはよう。」
「おはよう、お母さん。今日の朝ごはんは何?」
「ご飯にみそ汁、あと焼いた鮭があるわ」
「そう。手伝わなくて平気?」
「もうすぐできるし、いいわ」
リビングに戻った風音はテレビのスイッチを入れてみる。
朝はバラエティなどのゴチャゴチャしたものを見たくないので
ニュースへとチャンネルを切り替える。
ほとんどの局が先週起こった事件のことを流している。
(犯罪なんかじゃなくて動物のニュースがいいな。)と
将来獣医を目指す風音は思う。
「ほら、早く食べて支度しちゃいなさい」
焼いた鮭を食卓に運びながら母が言っている。
「うん。勉強って結構お腹すくし、ちゃんと食べなきゃ!」
「そうよ。しっかり食べないと体も頭も動かないんだから。」

学校を出るのはいつも決まって7時30分頃。
電車通学で少し離れた私立中学へと向かう。
『春風中学校』と書かれた校門をくぐり
中学1年C組と書かれた教室へ入る。
季節折々の花が咲き誇る校庭。
春には桜、夏には向日葵、秋はコスモスが
校庭や校庭の隅の花壇に咲き誇る。

「おはよう、風音♪」
「あ、おはよう。春香!」
春香とは大親友だ。
小学校からずっと一緒で
今は2人とも合唱部に入部している。
「う~ん、いい天気!」
「そうだね。私、5月の爽やかな風が一番すき。」
「本当?私もなの。何か春のやわらかいのと夏の前の爽やかさがあって・・・」

ガラガラと音を立てて1ーCの教室のドアが開く。
2人を含めたクラスのみんなが慌しく席へと向かう。
「おはよう、みんな。HR始めるよ。」
担任の山田先生だ。
このキャラクターに惹かれるのか生徒はみんな先生のことが好きだ。
風音も春香も先生のことは気に入っている。
「さて、体育祭が近づいていますね。中学校に入ってからはこういう大きな行事は初めてね。
先輩の指示にしたがってテキパキと動くように。それから、応援団をやりたい人は今週中に先生に言ってきてね。」
「は~い。」
それなりにクラスも平穏で快適だ。
風音が隣の席に座る春香に小さな声で聞く。
「ねぇ、やってみない?応援団。なんだか面白そう♪」
「私もそう思ってたの。じゃあ、やろうよ!」
意見が一致して少々声が大きくなってしまったのか
山田先生が
「コラ!そこの2人、話はちゃんと聞きなさい。」
と叱る。
「ぁ・・・ごめんなさい。」
「すみませんでした。」
笑い声がかすかに聞こえる。
「はい、HRを終わります。1限に遅刻しないようにね。」
学級委員の田辺さんが
「気をつけ、礼。」
と言うといっせいに
「ありがとうございました」
と全員であいさつをする。
風音はクラスのみんなが合わせて言うありがとうございますが好きだ。

まだ中1のせいか、授業には慣れていない。
おかげで風音には授業が長く感じで仕方がない。
「ふぅ~!やっと授業終わったぁ!」
「疲れたねぇ。」
「うんうん。あ、そうだ!応援団のこと山田先生に言いに行く?」
「そうだね!ちょうど今日は部活もないし。」
合唱部の活動日は毎週火曜日と木曜日だ。
職員室へと向かう2人の足取りはかるい。
職員室の雰囲気もアットホームな感じで2人とも好きだ。
「山田先生、私たち応援団やります!」
「おっ!第一号。いいねいいね♪」
山田先生は楽しそうに言う。
「そういう積極的なのがすきなのよ、先生。
これからもどんどんやってね!」
「勉強以外なら積極的に・・・」
「そうそう。特に数学とか英語とか。
考えただけでクラクラしちゃう。」
「もう・・・2人ともっ!勉強も大切よ。」
と言いつつも山田先生の口調は怒ってはいない。
「じゃあ担当の先生に伝えておくから。」
今の2人には何を言っても反論してくると思ったのだろう。
山田先生は人の心を読むのが上手なのだ。
「お願いします~♪」

電車の中というのは雑然としていて
春香はあまり好きではない。
「ねぇ?風音。」
「なぁに?」
「あのね・・・ううん。やっぱいいや」
「何よ。気になるじゃない。もしかして春香、遠慮しちゃってる?」
「ううん。ごめん、今度話すからさっ!」
「う~ん・・・絶対だよ。」
「それよりさ、私たちの名前の頭文字をとると学校の名前になるって知ってた?」
「え?春・・・風・・・あ!本当だっ!」
「何か私たち、生まれたときからこの学校に入ることが決まってたみたいじゃない?」
「うんうん。きっと私たちが一緒になるのも神様はみてたんだね。」
「あ、もう降りる駅。時間って早いね。じゃあ、バイバイ♪」
「また明日。」
風音はふと近所でよく見かけるノラ猫のことが気になった。
風音はそのノラ猫のことをクロと呼んでいる。
つやつやして真っ黒な毛に覆われた大きな目の猫だ。
(帰りに寄ってみるか。)
そう思っていつもの駅で降りる。


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